元日の夜－８

通称聖母坂。聖母病院という大きな病院があるのでそう呼ばれます。まだ７時頃だというのに、商店はみな閉まっているので、深夜のように静かで暗い。
病院の向かい側、１軒だけ、ポッと灯りがついていました。花屋さんですが、普段からこの店は外に花を置いたりせず、入り口は狭く、隠れ家のような雰囲気。その上、日中閉まっていることも多いのです。電灯のような赤っぽい光に惹かれて覗いてみました。
「こんにちわー。元日に開いているって、めずらしいですね」
「しょっちゅう閉めていてすみません。注文の仕事が多いものですから」
店主は三十台とおぼしき男性。
最近、こういう花屋さん、ときどき見かけます。個性的な花材をそろえてフラワーアレンジメントを受注し、届ける。店とはいっても実質は作業場なので、配達のときは留守になっちゃう。
季節柄、葉牡丹の類がいろいろありました。ピンクの薔薇のようなのや、人参の葉っぱみたいの。
ピンポン玉くらいの白い固まり…カリフラワーのようです。面白いね。
ギザギザの葉をした葉牡丹を買ったら、「元日だからオマケ」と、カリフラワーを１本添えてくれました。
家に帰って写真を撮ろうとして、あーっ、残念！　素敵なお店の中を撮らしてもらえばよかった。

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