ハルコさんの住む街－２

商店街をさらに進むと、桜の老木が花を咲かせていました。
「もう桜が咲いたから、春だなぁ」。いっぱしのオヤジみたいな口ぶりですが、子供の声です。
声の主は、お母さんの自転車の後ろに、ちょこんと乗っていました。
この道は、ハルコさんが仕事に出掛ける道でもあります。
歩くのがつらくなった人には、ハルコさんが訪問して髪の手入れをしてあげるのです。
地震に遭ったとき、そうした客の家にいました。
「マンションの９階だったの。私、腰が抜けちゃって。
お客さんは80いくつのおばあちゃんなのに、
私、座ったまま、火を消して、戸を開けてと、指図しちゃった」
高齢の、しかもお客さんに指図したなんてと、ハルコさんはすまなそうでした。

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